Kijikko diary

上海在住。手芸と小沢健二を愛する、私のダイアリー。

ある宿の話

京都・大阪版ミシュランが発表された。なんと、私が大学時代にバイトしていた旅館が2ツ星を獲得。久しぶりに旅館の名前を目にして、びっくりしたし、うれしかった。


その旅館は、最低でも1泊1名2万5000円〜の高級旅館だ。芸能人がお忍びで泊まりに来ていたこともある。そこでの経験といえば、女将さんに叱られたり、仲居頭のM子とケンカをしたりと、いろんなことがあったが、やはり、学んだことも多かった。


唐子人形のついたかわいい清水焼茶碗があるのを知ったのは、この旅館でだった。日常でリチャードジノリの食器を使うことがどんなにステキかということも知った。いつも旅館の廊下で流していたフランス映画「男と女」は大好きになったし、着物の着付けも覚えた。お料理も、食器や盛り付け次第でぐっとおいしそうになるし、「たち吉」や「織部焼き」がステキということも知った。


ステキなものに囲まれていたからか、朝5時台から始まり、夜9時くらいまで勤務することもあるという、けっこうハードな仕事だったが不思議と苦にならなかった。


食器より映画より着物より何より、お客さんがステキだった。品がある、粋な人が多かったような気がする。あるときは、どうしても早朝に二条城に行きたいというお客さんのために、女将に内緒で自転車をお貸ししたことがある。御礼においしいクッキーをくださった。また、京都の町の情報をくわしくご案内したところ、1万円もくださった方もいた。御礼に、てんとう虫のふろしきに包んだういろうをプレゼントした。


粋っていうか、物とか金もらっただけやん!!っていうツッコミも聞こえそうだが、「心づかいに対して、相応のお返しをする」という気持ちが、当時のビンボー学生だった私にはうれしかったし、新鮮だったのだ。私は何かを差し上げたわけではなく、喜んでもらえるように気づかいをしただけである。


やはり、それなりのステキな場所には、ステキな人が集まるのだな、とそのとき気づいた。貧乏大学には貧乏大学生が集まり、高級旅館には品の良いお客さんが集まる。成長中の会社には優秀な人が集まる。イケてない会社にはイケてない人が集まる・・・?名言は避けよう。。また、そんなにイケてない人でも、イケてる集団に入ることで、自分を磨こうとしてレベルアップしていくのではないかと。


そういうもんなんじゃないかと思う。
とにかく、思い出深いバイトだった。自分のお金でいつか泊まってみたい。


▼この宿なのです。
http://www.kanamean.co.jp/