Kijikko diary

上海在住。手芸と小沢健二を愛する、私のダイアリー。

惚れてまうやろ!幼稚園版

この際だから書かせていただくが・・・(どの際?)
今、娘が通っている幼稚園がすごく良くて、かなりの頻度で感動して泣いている。



たとえば、幼稚園からもらってくる、おたより(クラス通信)。
その中に「うちの子ったら」という、
クラスの一人を取り上げて、その子の様子を紹介するコーナーがあるのだが、
なぜか毎回、うちの娘が取り上げられているのである。



「●●ちゃんは、どのクラスの子ともすぐにお友達になっています」とか、
「運動会の練習をがんばっています」とか・・・
内容は他愛もないことなのだが、
なんで毎回うちの娘なのかな?
入園したばかりだから、気を遣ってくれてるのかな?
と不思議に思っていた。



ていうか、内心、
うちの子はそんなに注目されてるのか??へへへ・・・
なんて調子に乗っていた。



だが、なんと実は、
「うちの子ったら」のコーナーはクラス全員分作られていて、それぞれの子用に
カスタマイズされたおたよりが、各自のリュックに入れられていたのである。
という衝撃の事実を、今日知った。



惚れてまうやろーーーーーーーーーーーー!!!!!



各クラス20名として、全学年3クラス。
60人分の、「うちの子ったら」・・・
気が遠くなりそうな作業量・・・



惚れてまうやろーーーーーーーーーーーー!!!!!



おとといは、幼稚園に学費をおさめてきた。
そのとき、玄関のところに娘を含むクラス全員分のリュックが打ち捨てられてあった。



はて・・・?
なぜこんなところに?



と思っていると、園庭で子供達が自転車(三輪車)を乗り回す場面に遭遇。
みんな、めちゃくちゃ楽しそうである。
その奥の、なんとも涼しげな木陰にテーブルといすが出されていて、
女の子たちが座って絵を描いていた。
そこにうちの娘もいた。



〜以下イメージ〜
園長「みんな、おはよう〜!」
園児「おはようございます〜!」
玄関で園児たちを迎える園長先生。


園長「今日はいいお天気ねえ〜。外で遊んだら気持ち良さそうよ♪」
園児「わ〜!外であそびたーい!」
園長「じゃあ、今日はこのままここにリュックを置いて、外で遊んじゃいましょう」
キャッキャいいながら自転車に乗りはじめる子供達。


一部の女子「先生。お絵描きがやりたくなってきました」
園長「いいわよ〜。じゃあテーブルといすを運んでくるから、せっかくだから外でお絵描きしましょう♪」
園児「わ〜!楽しそー!」



・・・こんなやりとりがあったのだろうと予測される。



私が園長先生に「いいですね、外でお絵描き」というと
「うふふ。気持ちいいでしょう♪」とだけ返ってきた。
ので、このイメージも遠くないはず。



惚れてまうやろーーーーーーーーーーー!!
こんなごみごみした大都会・上海の空の下で、なんじゃーーーーー!!!
その自由な発想!!



全員分にクラス通信をカスタマイズするとか、
「気持ち良さそうだから」って木陰にテーブルを出すとか、簡単にやれることではない。
いくら学費を積まれても、私なら絶対やりたくない。



そんなことを、ひょいっとやってしまうのが、この幼稚園。



そこには、先生の「子供にとって良いことをしたい」という理想があり、それを単に実現していくという
至極まっとうでピュアな幼稚園づくりがある。



やれモンテッソーリだのバイリンガルだのアートだの情操教育だの早期教育だの、
小難しい言葉にがんじがらめになっている幼稚園が多い中で、とくにこれといった方針もない、この幼稚園。
「どんな幼稚園なの?」と聞かれても、答えに困ってしまう。



カリキュラムは外部からコーチを招いてのサッカー教室があったり、中国人の先生による墨絵の授業があったり、
カンフーがあったり、中国語があったり。
と思いきや前述したように、リュックを放り出して遊びだしてしまう自由さもある。
自由と規律のバランスがちょうど心地よいのである。
先生が「子供にとって良いこと」を考えた結果、もたらされた心地よさなのだろう。



ただ、それが先生の言葉で「うちはこういうバランスです」と語られることはない。
とくに方針がない中で、手探りで「心地よい保育」を、かなり真摯に探求している幼稚園だということがわかる。
その証拠に、もう何十年も前から上海にある幼稚園なのに、今年からいきなり「縦割り教育」を始めるなど、斬新さがある。
「うちのやり方はこう」と決めつけていない。
状況によって、もっと良い保育があれば、柔軟に取り入れる。



あと数年で閉園することが決定しているので、もう消化試合で適当にやってればいいんちゃうん?
とかあらぬことを思ってしまうバカ保護者の私だが、先生たちは全然違う方向を向いている。
子供たちの方を向いている。そこしか見てない。頭が下がる。



そういうところが本当に大好きだ。
惚れてしまって、ものすごく泣かされている。



さらに言うと、保育の質が向上するわけでもないのに学費だけがじりじりと毎年釣りあがっていく幼稚園業界で
ここも同様の値上げを周囲から迫られており、意にそぐわない流れに飲まれるくらいなら・・・
と閉園を決めたそうだ。
美しき去り際。その選択に勝手にロマンを感じ、ひそかに泣いているバカ保護者が私である。



うちの娘は、プレ幼稚園を含めると、4つの幼稚園に通ってきた。
親の都合で転園を余儀なくされたこともあれば、保育環境がイマイチだったため自発的に転園したこともある。
「今度こそ、ここに通ってよかった!と心から思える幼稚園に通い、卒園させてあげたい」と常に願い、
出会った5園目がここ。



明日は保護者のランチ会なので、熱くなってしまったが・・・
すてきな園に巡り合えて、本当に良かった。
卒園までずっとここに通わせてあげたい。